いよいよ今月の開催となったオトウラアオイとライブハウスの共同主催イベント「InVitation vol.1」。同日、前回のインタビュー時に「実現させたい」と語っていた会場限定シングルの販売が決定。そこに収録された新曲「悪者」を中心に話を聞くつもりが、その先の展開まで話が進み…。
------無事新曲のリリースが決まりましたね。
オトウラ アオイ（以下、アオイ）：心配はありましたけど間に合いました。
------アオイさんお得意の切ない失恋ソングなわけですが、なぜこの曲を選ばれたのでしょう。
アオイ：シングルとしてリリースするのであれば、当日のセットリストに組み込みめる曲にしたかったんです。買ってもらうための試聴にもなるし。
------なるほど。
アオイ：セットリストを考えて曲を並べていって、中間あたりでバラードを歌いたいと思ったんですよ。で、「既発曲じゃなくて、新曲が良いな。じゃあこのバラードゾーンに入る曲にしよう」と。この日の為の新曲を制作しようかギリギリまで悩んだんですけど、アルバムからの先行シングルにしようと思って、「悪者」にしました。
------それでアルバム収録曲でバラードだった「悪者」が選ばれたと。アルバムには他にもバラードはあるんですか？
アオイ：あるにはあります。でも、ちょっとしたネタバレになっちゃうんですけど、アルバムはバラードが少ないんです。次のアルバムはライブハウスで活躍できそうな曲を集めたいと思って取り組んだので。ただ、そうは言いつつも色んな楽曲が揃った気がします。
------ライブハウスで盛り上がる曲ばかりではなくなったということですね。アルバムについてはアルバムが完成した際に改めてお話を聞かせていただこうと思いますので「悪者」に話を戻しますが、曲の長さが短くて、歌詞も必要最低限にまとめられている印象でした。
アオイ：うん。出来る限りそぎ落として、余計な言葉は入れないようにしました。あまり事細かに説明したくなかったんですよね。
------ふむふむ。Ｂメロの『話した』と『離した』の言葉の違いで、『あの日』がそれぞれ違う日を指すことになるのが面白いですね。
アオイ：そうなんですよ。同音異義語で全く意味が違ってくるので、ちゃんと歌詞を読んでほしいです。いま言っていただいた部分は特にライブで聴いても分からない部分になるので、是非購入していただいて、歌詞を見ながら聴いてほしいんですよね。
------アオイさんのノンフィクション…というわけでもないんでしょうけど、思想が反映されてたりしますか？
アオイ：若干程度ですかね。亡くなった父に「別れる時は男が悪者になれ」と言われたことがあったんです。それこそ女の子がすぐに次の恋に向かえるように…という意味だったと思うんですけど、実際のところはそんなふうにはなれなくて。「自分が悪いところは素直に認めるけど、ここに関してはあなたが悪いですよね？」っていうスタンスなので、全然父の教えを守れてないんですけど(笑)。でもそんなことも言ってたなーとふと思い出して、そういう性格の男性を主人公にした失恋ソングをつくろうと思って、こういう歌詞にしました。『思ってもいない言葉で傷つけて』なんて出来ないですし、『許さないでいて』なんて言えない。許してほしい(笑)。
------そこまで強く相手のことを想えるのに、なんで別れを選んじゃったんだろうと考えたんですけど、男性自身の『弱さ』や『自信のなさ』が関係しているのでしょうね。
アオイ：ですです。端的に言うと、幸せにできる自信がなかったということになりますね。そこに至る決定的な出来事を記しているわけではないので、そういったところを聴いてくれた人それぞれで当てはめて聴いてくれるといいですね。その為の余白。
------その余白がある分、共感しやすくなるわけですね。
アオイ：はい。短いながらも良い歌詞がかけたような気がしています。
------ライブではアオイさんが泣いちゃいそうですね。
アオイ：え！どうだろう…。歌詞の世界に入り込めたらそうなっちゃいそうですけど、わかんないですね。
-----タイトルも潔く「悪者」と、漢字２文字で表記されているところにもこだわりがあるのでしょうか。
アオイ：もちろんあります。他の人はどうか分からないけど、明朝体で書かれている「悪者」から切なさを感じて。それにインパクトもあるタイトルだと思うんです。曲を聴かずにタイトルだけ聞いたら「どんな歌なの？」ってなりそうだし。少し前にひらがなで４文字のタイトルをつける曲を制作するブームがあったんですけど、その時の感覚に近いかな。
-----「あふれる」や「はつこい」ですかね。
アオイ：そうそう。叙情的で切ないイメージにぴったりだなと思って。「悪者」のような漢字２文字シリーズに関しては、タイプがバラバラなんですけどね。ひらがな４文字シリーズも、漢字２文字シリーズも、いずれもアルバムに入る曲、入らない曲があるのでお楽しみにしていただければ。
------承知しました。ここからはボーナストラックの件についてもお話をお伺いします。
今回ボーナストラックが２曲収録されていて、「歌ってみた」ということで木曜軍人の「Promise」、HOWLFの「恋が冷めないうちに」が選曲されています。何故この２曲になったのでしょう。
アオイ：今回出演していただくアーティストの曲を歌って収録したかったんです。だから、本当はマダラの曲も歌ってみたかったんですよ。でも、マダラについてはマダラ側の意向で「ごめんね」って断られてしまって。それで許可を出してくれた木曜軍人とHOWLFの曲をそれぞれ１曲ずつ歌いました。
------マダラに関しては残念でしたね。選曲はどのように？あちらから指定されたんですか？
アオイ：いえ、僕が選びました。
------選曲の理由は？
アオイ：好きだからです。まぁこれは大前提ですけど。で、次の前提として好きな曲は（木曜軍人もHOWLFも）それぞれいっぱいあります。その中でも特に好きな曲且つ、自分の色を出してみたい曲にしました。
------木曜軍人の「Promise」はキーを下げられてますよね。
アオイ：２音半くらい下げました。原曲がね、高いんですよ。キーが。
------アオイさんなら出せる高さじゃないんですか？
アオイ：出せなくはないですよ？でも、それだとまんま「木曜軍人のコピー」みたいになっちゃうな…と思って。あと、出せなくはないけど、結構きつい(笑)。それに、僕らしさを出したいということでキーを下げました。もうちょっと高くても良かったかなーと思い返す日もありますけど、スケジュールの都合上このままで形にしました。
------原曲は爽快感が強いですけど、アオイさんが歌ってみたものは良い意味での泥臭さを感じました。
アオイ：キーが違うし歌声が違うからそう感じるんでしょうね。本家の方の爽快感は半端ないです。めちゃくちゃキャッチーで、ポップだしかっこいい。本当に一聴してすぐ好きになった曲です。歌詞としては「いらないよ いらねぇよ」の部分が好きなんですよね。
-----随所にアオイさんらしさは出ていますが、そのフレーズに関してもアオイさんの色が強く出ているポイントですね。ちなみにHOWLFの「恋が冷めないうちに」に関しては逆にキーを上げてますよね？
アオイ：そうですそうです。いくつ上げたかな…。こちらも出せなくはないけどって感じです。響さんの渋い歌声には敵わないから、僕なりの切なさを表現できる高さに調整させていただきました。
------キーを上げただけではなく、アオイさんの声質が影響してか、どこか幼さであったり中性的なイメージに変わりましたね。
アオイ：歌詞の女性に近づいた感じはありますね。サビの、声を張り上げる部分は特に感情がこもりますし、やっぱりこの曲は最後のＡメロで終わっていくところ。ここがグッときますね。
-----２曲ともトラックのキーを変更しただけですか？
アオイ：うん。今回「歌ってみた」と表記しているのも、純粋な「カバー」ではないですよということを表現したいと思ったからです。「カバー」というのは、再構築する側が原曲を咀嚼する必要のある行為だと思うんです。再構築するにしても、原曲と雰囲気を変えつつも活かすべきところを残して自分たちの色を出す場合もあるでしょうし、
あえてぶち壊してガラッと雰囲気を変えるパターンがあったり、逆にほぼ完全再現をすることに美徳をもつ…というようなやり方もありますよね。最後の考え方は所謂「コピー」に近いかなと思うんですけど、今回は「コピー」でもなく「カバー」でもないなと思ったんですよ。というところでいくと「歌ってみた」っていう表現が一番しっくりくるかな、と。
-----わたしもとても腑に落ちました。その表現が最適だと思います。いずれは「カバー」という形で木曜軍人やHOWLFの楽曲を披露する可能性もありますか？
アオイ：可能性はあります。先ほどもお話したように好きな曲はたくさんあるのでそれらをカバーしたい気持ちもありますし、今回歌ってみた曲を改めてカバーという形で発表したい気持ちもあります。その辺りは自分のオリジナル曲の制作が落ち着いてからか、手を出せる余裕があるときにでも…という気持ちです。ずーっとセカンド（アルバム）を作っていると話しているじゃないですか？でも、もう既にその先の作品の構想があるんですよね。
-----まだセカンドアルバムも完成していないのにですか！？
アオイ：やっぱり早すぎですかね？(笑)でも、セカンドを発表してライブをしたら、その次は「こんな楽曲がいいな」って考えちゃって。もちろん色んな状況次第で変わってくるとは思うんですけど、今現在としては、セカンドを出した後は３枚目のアルバムをなるべく早く出したいと考えています。
-----まさかの展開に驚きを隠せませんが、それが実現できればとても楽しみです。
アオイ：あくまで現時点での予定ですから、そこに関してはあまり期待しないでいただきたいですが、３枚目と４枚目のアルバムを２枚同時発売するのが理想です。
-----さらに衝撃です！
アオイ：１枚はバラードを中心とした曲を収録して、もう１枚は今までのオトウラ アオイっぽさが薄いものにしたいなぁ、と。
-----各アルバムでコンセプトが異なるということですね。
アオイ：そういうことです。現在制作中のセカンドでも「ライブで盛り上がれるもの」を意識して制作してきたわけですけど、蓋を開けてみると意外とミディアム系の楽曲も多くて。アップテンポなものも爽やかな曲が多いので、そことは違う方向に舵を切ってみようかな、と。そういう音楽性のＶ系アーティストは恐らくほとんどいないと思うから、うまいことハマればいいなとも思うし、純粋にそこに挑戦してみたいんです。
まだ詳しく話せないのでなんのことやらって思われそうですし、ちょっと先のことになっちゃうんですけどね。で、もう１枚のバラード中心の作品はバーとかで歌えたらいいなって考えています。もうご存知の通り僕は基本的にバラードが好きだし、ほっとくとバラードやミディアムテンポの曲を歌いたくなるんですよ。その欲求を完全に押し殺すことはできないので、それを解消するためにも作ってしまえば丁度いいんじゃないかという算段です。いやほんと、セカンドがファーストからかなり時間があいてしまったので、今度はスピード感をもって出したいですね。シングルは切らずに未発表曲だけでバーン！とアルバム２枚同時発売出来たらかっこいいだろうな…。
-----シングルは出さない方向で考えていらっしゃるんですね。
アオイ：カップリング曲の準備をしだすとアルバムの完成が遅れちゃうので。
-----配信など形は問いませんが、１曲だけリリースするという考えはない？
アオイ：あまりないですね…。おそらく３枚目と４枚目は収録曲が少なくなる想定なんですよ。そこからシングルを切っていくと、アルバムで初出しとなる新曲の数が減っちゃうじゃないですか。それは避けたくて。あと、シングルを出すならカップリング曲は用意したい。「くゆり」から「あゆみ」まではあえてカップリングらしい曲を用意しませんでしたけど、それじゃ嫌だなぁ…と改めて思ったので。
-----なるほど。「悪者」にしてもカップリングになぜこの２曲を収録したのか、しっかりと意味合いを持たせたうえで収録されていますしね。
アオイ：イベント当日のみの会場限定という意味が分かっていただけると思います。
-----それにしても、セカンドもまだ完成前ですのに、さらに次のアルバムの構想が２枚もあるとは…全貌が気になります。
アオイ：バラードアルバムじゃない方はほんと今までと印象が変わると思いますよ。
今までの僕を知る人からは「劇的に次のフェーズに進んだね！」って思うはずだし。
だから、３枚目の収録曲が出来ていっても、今までのようにライブで先行披露することもしません。収録曲がすべて出揃ってからきちんと聴いてほしいな、と。
-----今まではできたての曲でもセットリストに差し込まれていましたものね。
アオイ：すぐ歌いたくなるし、聴いてほしくなるんですよ。そのへんはちゃんと我慢しようと思います。ついでに言うと、その２枚のアルバムとは別で考えている作品もあります。そっちのほうが早く発表できるかな？
-----いつも思いますけど、アオイさんは制作意欲が尽きませんね。
アオイ：形にしたい曲を全部発表出来たらアルバム何枚分だろ？って感じです。
現時点でそれだけ構想があるのに、日々「こういう曲も歌いたいな」って追加されてしまうんですよね。その中でも発表していくタイミングをちゃんと見極めていきたいと思います。
-----最後にイベントへの意気込みをお聞かせください。
アオイ：九州全県ツアーを終えての次のアクションとして行うのが、この主催イベントです。今まで紡いできた縁があるからこそ開催できるイベントですし、開催地が地元ということもあってとても気合が入っています。知り合いも見に来てくれる予定なんですけど、身内ノリで楽しむものや思い出作りにはしたくないし、伝えたいことを伝えられる日にしたいと思っています。純粋に楽しんでほしい気持ちもありますけど、僕は歌にのせて伝えたいことがある。だから、楽しませるし、伝える。そのどちらも達成できるようにセットリストも考えて考えて決めました。誰かのインタビューで読んだんですけど、「お客様が想いを受け取ってくれないと思って歌うのと、受け取ってくれると思って歌うのでは、実際に伝わり方が違う」と言っていたんです。それが本当かどうかは分からないけど、イベント当日は「僕の想いを受け取ってくれる」と思って臨みます。前売り券も当日券も値段は変わらず２０００円なので、当日気軽にお越しいただければ嬉しいです。自信を持って言えるのは「見に来て後悔させないよ」ってこと。
「見に来ないと後悔するよ」って言い回しとは意味合いが違うんだけど、わかるかなぁ…。見に来なかった人にフォーカスしないんで。その場に集まってくれた人達に、全力で最高の時間を届ける。幸せになってもらう。そんな気持ちで届けます。是非会場でお会いしましょう。よろしくお願いします。
