鹿児島・Speed Kingにて九州全県公演主題「毒にも薬にもならない音楽」を盛況のうちに収めたオトウラ アオイ。以前のインタビューでも語っていたように、次なる展望は彼の地元佐賀での主催イベント開催と成功。イベント後もライブを精力的に行っていく予定だという。彼の撒いた種が今まさに芽を出そうとしている。
------まずは九州全県公演制覇おめでとうございます!
オトウラ アオイ(以下、アオイ):ありがとうございます!ようやく…といったところですが、無事終了させることができて安心しています。
------一時期は代替公演もお考えだったのですよね。
アオイ:うん。なかなか決まらなかった佐賀、宮崎、鹿児島については福岡で代替公演を行おうかと思っていました。でもそれじゃ趣旨がぶれちゃうから。「九州全県公演」と掲げたからにはやり遂げたいという気持ちでしたね。
------完遂されて私も嬉しいです。ファイナル公演となった鹿児島で、主催イベントの開催が発表されました。会場の反応はいかがでしたか?
アオイ:めちゃくちゃお祝いムードでしたね。「おめでとう」という言葉をたくさんいただくことができました。そもそもね、鹿児島の方々はすごく暖かかったし、めちゃくちゃ盛り上がってくれたんですよ。僕の動員ではないけど、お客さんが多かったこともあるし。あとは共演したアニブイさんのおかげなところはあります。
------どういったところでそれを感じたんですか?
アオイ:アニブイさんの為に遠征されてるバンギャさん達がいて、そのバンギャさん達が中心となって盛り上げてくれたんです。やっぱりね、常々思っていることではありますけど、バンギャさんってすごいんです。順応性が半端ない。知らない曲でもある程度正解の「ノリ」を理解できるんですよ。もちろん変則的な展開であれば対応が難しいし、楽曲の全体像が掴めないと噛み合わないんでしょうけど、それでも知識と経験による予測がすごい。それに「楽しもう」って気持ちが伝わってきましたね。すすんで最前に来てくれて。あれもすごく嬉しかった。そんな人たちが最前にいるからこそ、周りの人たちも迷わないし、楽しみやすい。そんな空気を作ってくれたアニブイのファンの方々に感謝だし、そんなファンを連れてきてくれたアニブイさん達にも感謝しています。
------キャッチアップしてくれる観客の皆さんがいると、全然違いますよね。でも、裏を返せばアオイさんがしっかり熱を投げかけてくれたからこそ、彼女たちも受け止めようという気になったんじゃないでしょうか。
アオイ:あぁ。それは以前別の場所でも同じことを言われました。二度目のINSA公演だったかな?「アオイくんがちゃんとリードできてたから、お客さんもついてきてくれたんだよ」って。お互いに良い関係になれたのであれば、最近僕がライブでよく口にしている「ここにいる全員で一つの空間を作ること=それがライブ」を形にできているんだなぁと感じられるし嬉しいですね。バンギャさん以外にマダムの方もライブに来てたんですけど、マダムも一緒にノってくれてたのも印象的だし嬉しかったなぁ。見よう見真似で横モッシュもやってて可愛かった(笑)。
------アオイさんの想いをしっかりと言葉にしているからこそ、想いが会場中に伝わって、盛り上げられたんだと思いますよ。鹿児島のセットリストを見ましたが、最近のアオイさんとしては珍しい構成でしたね。
アオイ:あ、気づいていただけました?基本的にはバラードとかのしっとりした出だしが多かったんですよ。初ライブのQueblickと、大分のときだけ「t∞ late」始まりにしてましたけど、それ以外は歌を聴かせてからのスタートでしたからね。「without you」でゴリゴリに攻めるスタートは良いかもしれないと思いました。「t∞ late」始まりだとポップすぎてかわいい印象になるから、今はそういう時期じゃないな、と。
------そういったセトリはやはりツアーのファイナルも意識したものでしたか?それとも今後も見据えたものですか?
アオイ:どちらの意味合いもありますが、「ファイナルだから」という気持ちの方が強かったです。ツアーなんだから全箇所通してセトリの雰囲気は統一した方がいいかなって考えももちろんありましたけど、それでいくともう既に統一感はなかったですから。福岡や佐賀では「毒にも薬にもならない音楽」を歌ってないし、佐賀なんて全部バラードだったし。そんなわけなので統一感なんてものは気にせず、ファイナルだししょっぱなからガンガン攻めようと。それが今回はうまくハマったんじゃないですかね。
------このツアーでは各箇所なるべく未発表の新曲を披露する…というのも見どころの一つだったかと思いますが、鹿児島では「PSYCHO」という新曲を披露されていました。参考音源を聴かせていただきましたが、「howling」系統のデジタル色の強いハードな楽曲ですね。
アオイ:この曲は当初「白昼夢」と両A面シングルとして発表する予定だったものです。当時はこっち路線の曲を増やそうと考えていました。
------ライブを始めたことで、ライブで盛り上がる曲を揃えたいと仰られていましたね。それがこういったデジタル色の強いダンサンブルな楽曲だったと。
アオイ:そうそう。それで、「白昼夢」と「PSYCHO」、「白昼夢」のカップリングになった「私以外死んでくれないかな」と同じ系統の楽曲を作ってました。コンセプチュアルなものとしてその3曲をそのまま出してもよかったんですけど、「今後はこういう路線で行くのね」って思われるのも嫌で。あくまで「こういう楽曲も武器としてありますよ」ってだけで、色んな楽曲を歌いたいと思っているので、どう受け止められるか鑑みたし、当時「あふれる」が出来たことでリリース形態を変更しました。
------なるほど。それで実際いかがでしたか?ライブで披露してみて盛り上がったんじゃないですか?
アオイ:いい感じに盛り上がってましたね。僕の中ではもっといけんじゃないかなって思いましたけど、それももっと浸透したら理想に近くなるのかな、と。よくアーティストの方々が「曲を育てる/曲が育つ」という話をすると思うんですけど、それが少しわかってきました。これは先が楽しみですよ。中々難しいかもしれないですけど、曲中フロアに降りてお客さんと混ざりたいなーとも思いました。あと、全然その気はなかったんですけど、気づいたらこの曲でシャウトしてました。
------ええっ!今までそんなことなかったんじゃないですか?
アオイ:あったような無いようなってくらいの感覚ですね。もともと僕シャウトが苦手で…というか出来ないんです。多分シャウトの出し方が下手なんですよ。でも鹿児島では、そんなの考えてませんでしたね。叫びたいから叫んでたって感じです。
------エモくていいじゃないですか。
アオイ:喉に負担がかかるからなるべく叫びたくはないんですよ。でも、衝動を抑えきれませんでしたね。それだけフロアの皆さんの力が強かったし、熱があったんだろうなって。僕もそれに呼応するように暑いライブが出来たんじゃないかな。楽屋に戻ったとき夏彦さん(アニブイ)に、「ちゃんと良かったよ。それにいい意味で元々の印象と違った。」って言ってもらえたんですよ。どんな印象を持たれてたのか詳しく聞いてないんですけど、おそらくもっとスマートなライブをすると思っていたんじゃないかなと推察しています。カイエさん(アニブイ)も「(アニブイ)ふたりで大宰府のMV(Secret Sign)見ましたよ」って言ってくださっていたので。
------確かに、あの曲を聴いて熱いライブが展開されるとは予想できませんね。
アオイ:リハも粛々とやるタイプだし、楽屋でも静かな方なので。全然しゃべらないわけじゃないし、コミュニケーションも取る方なんですけど、うるさくはないというか…。だから、ステージ上とステージを降りたときのギャップがあったんでしょうね。みんなにどう映っているか分からないですけど、僕ってわりと熱い男なんですよ。それがステージの上だと解放されちゃうのかなー。あ、いま思い出したけど、みんなリハの時も本番みたいに煽ったり動いたりするのにびっくりしました。僕は確認程度でしか動いたりしないので。煽りも本番で思ったことしか言わないですし。僕みたいなタイプは小倉では怒られるみたいです(笑)。
------今後もし小倉でライブをするときは要注意ですね(笑)。バンギャさん達を前に手応えを感じていらっしゃいましたから、尚更V系のイベントにも出演されたいんじゃないですか?
アオイ:それはありますね。他ジャンルのお客さんも基本的にはウェルカムな様子で見てくれるし、バンギャさんのほうがシビアに見てくる可能性も大いにありますけど、V系バンドが集まるイベントにも出たいです。
------さて、主催イベントの詳細も発表となりましたが、まずは主催イベントのタイトルについてお話をお聞かせいただけたらと思います。「Invitation」つまりは「招待状」ということですが、これにはどういった意味合いを込められたのでしょう。
アオイ:基本的にはそのままの意味ですよ。僕たちのライブに招待しますって。あとは、これ「V」だけ大文字じゃないですか。ヴィジュアル系の「V」なんですけどね、ヴィジュアル系に「In」して下さいって意味でこんな表記になってます。イベント名はまぁまぁ悩んだんですよ。第一候補として考えていたのが「共同戦線」で。これしかないだろう!って思ってたら僕の大好きなアンフィルさんとmitsuさんの2マンライブのタイトルだった…(笑)。言葉としてはありふれているけど、かぶってるのは流石に良くないかなと思って却下して。次に、出演者が木曜軍人さん、HOWLFさんのみ決まってた時期があって。それぞれ九州全県ツアー「毒にも薬にもならない音楽」で共演していたので、
「毒にも薬にもならない音楽-FINAL-」、もしくは「毒にも薬にもならない音楽-JUDGEMENT-」みたいにしようかなって考えてたんですよ。でも、幸いにもマダラさんの出演が決まり、晴れて別の案にできることになって。
------「毒にも薬にもならない音楽」に絡めるタイトルは本当は望んでなかったということですか?
アオイ:継続的にやっていくイベントという前提があったので、「毒にも~」に絡めるタイトルにするのは控えたかったんですよ。僕自身は「毒にも薬にもならないなんて言わせないぞ」という決意や、逆説的な意味合いも込めてつけたタイトルなんですけど、やっぱりタイトルそのままの意味で受け取っちゃう人もいたので、僕自身のことをそう思われるのならまだしも、他の演者さん達の音楽まで「毒にも薬にもならないの?」と思われるのは嫌だったんです。それで他にもあった候補の中から考えに考え抜いて、「InVitation」にしました。
------納得しました。出演者の方々についてもお話が出たので聞かせてください。どのような基準で演出されたんですか?
アオイ:その前に話しておきたいこととして、イベントをやるにあたって決めたことがあって。これはRAG-Gの店長さんと決めたことなんですけど。先程も話したように定期的にできるイベントにする。そしてヴィジュアル系のイベントにするということだったんですね。そこから更に僕自身が決めたこととしては、金銭面や政治的なしがらみがなく、自分自身が楽しめるイベントにするということ。つまりは僕自身が好きな人たちだけを呼ぶということにしました。これはRAG-Gの店長さんも同意してくださっていて、「とにかくオトウラくんが楽しめるものにしよう」と言ってくれたんです。それで絶対に出てほしいと思って、長崎で一緒になった木曜軍人さんと、熊本やその前から福岡でもご一緒させていただいた響さん(HOWLF)にはすぐに声をかけました。この2組以外にも、出てほしい人たちにたくさん声をかけましたよ。今回はスケジュールの都合で出演がお見送りになったバンドさんが多かったですけど、イベントは継続させますからね。またお声がけして絶対佐賀に連れてこようと思っています。それにしてもね、アニブイさんやLUCIARTさんには出て欲しかったですよ。都合が合わず仕方ないとはいえね…。その他にも全国区で活動されているバンドさん達にも声をかけました。本当に恐れ多いんですけどね。このイベントが大きくなれば出てもらえる可能性が大きくなるかもしれないし、いまだに諦めてません。たくさん人気のバンドさんをお招きできるようにして、V系は佐賀が熱いと言わせてやりますよ。
------是非次回以降参加していただきましょう!ほのかな疑問になりますが、マダラについてはどういったご関係になるのでしょう。今まで共演経験はないですよね?
アオイ:仲良しの匡紀さんがクラロカさん(CRACK ROCKAHOLIC)を脱退する日のライブでお知り合いになった関係者さんがいて、それが縁となってマダラのギターの空さんとお近づきになったんですよ。お互いに「いつかご一緒したいですね~」って話はしてて。今回のイベントもお声がけしたいと思っていたんですけど、お忙しいことは分かってたし、都合が合わないんじゃないかって思って遠慮してたんです。でも、まさかのまさかで、空さんから「マダラで出演したい」と連絡をくださって。こちらからしたら願ってもないことだったので「やったー!」と喜びました(笑)。もしかしたらまだ出演者が増えるかもしれませんけど、一先ずはぼくを含めたこの4組で臨みます。
------とても楽しみですが、主催イベント後もライブの予定は考えているんでしょうか。
アオイ:そうですね。今までは仕事等の自分自身のスケジュールの兼ね合いもありましたが、次はあまり日程を空けずにやっていけたらな、と考えています。そのほうがライブの「モード」に集中できるし、ライブ自体の精度が上がっていくんじゃないかと思うんですよね。期間が空くと、どうしても都度リセットされる感覚になるので。九州全県を回った「毒にも薬にもならない音楽」のときも、ツアーとは銘打っていないものの、ツアーのようなものではあったじゃないですか。あれも、1公演ごとに期間が空いていたので、ツアーと言うよりは単発のイベントに出ていた感覚なんです。こちらとしては積み重ねているわけだし、繋げてきた気持ちもあるので、ツアー感が全くないのかと言ったら嘘になりますけど。主催イベント以降のライブがどんな形になるのかはまだ未定ですけど、より精度を上げていきたい、そんな気持ちです。
------主催イベントで何かしら発表がありますかね?
アオイ:どうなんでしょうね。発表出来たらいいんですけど…そこは僕が関係各所にせっついてみます(笑)。エンタメとしてそういうワクワクも大事ですからね。あとは主催イベントに絡めての理想というか、やってみたいなと思う事はありますけど、出来る範囲内で実現したいなと思っています。
------そちらの内容も差し支えない範囲でお聞きしたいです。
アオイ:絶対に出来ないことで言うと、出演者全員で撮り下ろしの集合写真を撮りたいと考えていました。あとは合同のグッズをつくったり、合同撮影会なんてできたら楽しそうだなぁって。アンコールでセッションをするのも夢ですね。他にも各々新曲を持ち寄ってオムニバスCDを制作したり、お互いの曲をカバーし合ったり、そういう企画もやってみたいと思っていたんですけど、時間的に厳しいので、vol.2を実施するときはその辺も込々で相談してみようと思います。
------これ全部、実現できるといいなと思う事ばかりでしたが、どれも実現は難しそうですか。
アオイ:今話したのは全部無理ですね。厳しいと思って誰にも話していませんし。ただ、自分だけ頑張ればできそうな企画も思いついてて。僕だけでも会場限定CDを出したいと思ってるんですよ。僕の新曲を1曲収録して、そこにボーナストラックとして他の出演者さんたちの曲をカバーして収録できないかなって。
------それは良いですね!聴いてみたいです!
アオイ:今時YouTubeで公開すればいいと思うんですけど、ライブに出演する方々の曲を歌ってみて、それを収録したCDをその日に販売することに意味があると思うんです。各々の事情もあると思うので、許可が下りれば実現させたいと思っています。
------最後に主催イベントについての意気込みをお願いします。
アオイ:人生初の主催イベントです。初めてのことは泣いても笑っても1回きり。であれば、笑って終わりたい。ライブの質も然ることながら、どれだけたくさんの人が足を運んでくれたかというのも、成功だったのかを判断する材料になると思います。とにかくまずは来てほしい。僕の大好きな人達を紹介させてほしいんですよ。サブスクもいいけど、生で、ライブでしか伝わらないものもあるんだよって、まだ知らない人には知らせたい。知ってる人もこの熱を共有してほしい。楽しいだけじゃなく、何か感じられるものがあると思うので。ぎりぎりまで悩んじゃう人や、イベントの存在を知らなかった場合でも足を運びやすくしたいという思いから、チケット代も前売りと当日で変更はありません。普通当日券なんて前売りより500円~1000円くらい高くなりますからね。かなりお得だと思います。だからといって無料にはしたくありませんでした。2000円の価値はあると思うし、なんなら2000円以上の価値の時間を提供できると思うので。それはあくまで僕の価値観なんですけどね。それと、これは余談ではありますが、僕の誕生日も近いんですよ。だから、ついでにお祝いの言葉をいただけたら嬉しいなって。集まってくれたみんなが「ここを選んでよかった」と思ってもらえるような空間にするので、信じて遊びに来てください。