エイプリルフールに絡め、碧-aoi-として再始動するという発表を行ったオトウラ アオイ。その際YouTubeに上げられたティザー「サクラノヒミツ」を含む、「桜の秘密」というシングルをドロップする。表記違いの同音同タイトルが収録された今作についてインタビューを敢行した。
------今回のシングルは、エイプリルフールネタで終わるかと思われた碧-aoi-さん名義の楽曲も収録されるのですね。
オトウラ アオイ(以下、アオイ):はい。オトウラ アオイと碧-aoi-のスプリットシングルという体(てい)でリリースします。せっかくフルコーラスで作成しているので、発表しないのももったいないじゃないですか。近年、様々なアーティストの方々が普段の音楽性とは違う楽曲を発表するというような動きが増えたと思うんですけど、それってアーティストならではですよね。そのアーティストの別の世界線の活動を見ているみたいで、ファンやリスナーとしてはとても楽しい嘘だと思ってて。そう感じている故に、自分も聴いてくれる人に楽しんでもらいたい気持ちと、純粋にやってみたいという気持ちから楽曲を制作しまして。ぼくとしては、V系というジャンルに身を置いているつもりなんですけど、コテコテなものではなく、見た目はメイク薄めで、一般的なJ-POP寄りのソフトなヴィジュアル系だと思っているので、コテコテのヴィジュアル系で活動していく…という嘘をついてみました。
------今後もオトウラ アオイとして活動していくんですよね。
アオイ:そうですね。表記は変わらずいろんな音楽性で活動できればと思っています。
ただ、「碧-aoi-」は僕の中の「第二の人格」という設定なので、また現れる可能性はありますし、「碧-aoi-」名義で作品を出したり、ライブに出演するという企画があっても面白そうだなって考えています。
------その構想も出来上がってたりします?作品に関して言えば、例えば「オトウラ アオイ」名義の楽曲をリメイクする…とか。
アオイ:まだうすぼんやりな感じですけどね。作品を出すなら「碧-aoi-」名義で曲を用意したいです。ライブになれば話は別ですけどね。リメイクした楽曲が混ざってても面白そう。まぁ、しばらくは完成させなきゃいけないアルバムがあるからそれを終わらせてからになるだろうし、第三、第四の人格が登場するかもしれませんし(笑)。
------色んな人格が出てくるのも楽しみですが、なんにせよまずはセカンドアルバムの完成にこぎつけなければいけませんね。スプリットシングル「桜の秘密」に収録されたオトウラ アオイさん名義の「さくらのひみつ」はアルバムに収録予定の楽曲ですか?
アオイ:アルバム収録の楽曲になります。アルバム制作の過程でできたというわけではなく、今回の企画を構想した上でアルバムにも入れたいと考えました。
------そもそも今回の企画はどのようにして考えつかれたのでしょう。やはり、エイプリルフールのネタが先にあった状態で考えていったのでしょうか。
アオイ:違いますね。まだ四季シリーズのEPの制作をしている時なんですけど、それこそ「ナツメロ」とかかな?「アオハル」の構想を練っている時に「桜の秘密」というワードが思い浮かんで。で、同じ言葉だけど、ひらがなとカタカナで表記を分けて、そこから受ける印象で歌詞の内容も曲も変えて発表したら面白いかもって思ったんですよね。その発想自体は今でも好きなアイドルグループ欅坂46を参考にさせていただきました。
------ひらがなけやき(現、日向坂46)とかありましたね。
アオイ:そうそう。それで、ひらがなは柔らかい雰囲気がするから爽やかな曲調で、カタカナはどうしようって考えたときに、爽やかの反対だったらドロドロかな?と思い、ドロドロした雰囲気を出すならコテコテのヴィジュアル系っぽい楽曲でいこう。それをエイプリルフールのネタにしてみよう。そんな流れで決めました。発表する時期はズレるとはいえ、曲調としても「アオハル」に入ってる曲と被らないし、ナイスアイデアだったんじゃないかな。
------なるほど。見事に全く異なる印象を与える楽曲が出来上がりました。まずはひらがなの「さくらのひみつ」から話を伺います。この楽曲の歌詞は学生生活が舞台となっていますね。
アオイ:内気で輪の中に混じれず、孤立している女の子が気になって、そこから恋をしていく男の子の話ですね。
------リアリティのある歌詞に思えたのですが、これは実話ですか?
アオイ:完全な創作物です(笑)。多分ですけど「上履き」っていうワードを入れることができたことで、リアルさが増したのかも?あと、そのワードを入れたおかげで「この曲は学園モノの歌詞だな」って分かりやすくなったと思ってて。
------「くたびれ始めた上履き」という歌詞から、新入生の話ではないことも読み取れます。
アオイ:ありがとうございます。直接的なとこボヤかすとこの、絶妙なラインを狙って歌詞を書きました。後々になって気付いたんですけど、少女漫画の「君に届け」の主題歌でもいけそうな歌詞だなって思いました。
------あぁ~。っぽいですね。サビ始まりなところも主題歌に持ってこいな曲調です。
アオイ:ですよねー。リメイクされる際は「さくらのひみつ」を使ってほしいものです(笑)。それと、サビ始まりにするとシングルっぽさも出てきますよね。そこは意図してそうしました。あと、ライブをやっていくにつれ、お客さんの心を掴みやすい楽曲にしたいっていう気持ちも芽生えてきて。サビ始まりって結構キャッチーじゃないですか。この曲もそうですけど、アルバムに入る曲はその辺も意識しています。
------周りとの関係を遮断して自分だけ見てよっていう考えじゃなく、周囲とも触れ合って色々経験した上で自分を選んでほしいという考え方や、素敵な女の子を独り占めしたいと思いながらも、みんなにもこの魅力を知ってほしいと思える主人公は正に「君に届け」の風早くんのようですね。
アオイ:モテそうですよね。ぼくは、周りは見ないで!ぼくだけ見てて!って思っちゃうから。メンヘラ野郎です(笑)。今回は意識してなかったんですけど、フィクションの歌詞の時は、自分とは真逆の考え方が強く出るんだなぁって認識しました。
------それでいくと、碧-aoi-さん名義の「サクラノヒミツ」もフィクションですよね。美しいままでいてほしいからと彼女を殺めてしまっています。
アオイ:とんでもない奴ですよね。平成初期とか…へたしたら昭和くらいの時代が舞台で人が殺されるっていうのが、ぼくの中での古のヴィジュアル系のイメージの一つです。桜の木の下には死体が埋まってて、その死体の血液を吸収するから桜がきれいに咲くって話があるじゃないですか。
------梶井基次郎の「櫻の樹の下には」の影響で広まった話ですよね。
アオイ:そうです。それをモチーフに、どうにかして桜の木の下に死体を埋めたいな…と考えたわけです。どんな理由で死体を埋めるのが良いか。そこで、美しい「君」が老いてしまうのが許せない主人公に殺してもらおう、と。この主人公は自分自身の狂気に気づいていなくて、本当に純粋なんですよ。だからこそ、ぼくらからしたら恐怖を覚えますよね。「君」の血を吸い上げた桜をずっと愛し続けるし、それが彼なりの本気の愛の形なわけですから。ヴィジュアル系ならではの歌詞だなぁって思います。
------楽曲自体はこれまでのオトウラさんの楽曲にもありそうなタイプの曲ですけど、歌い方も変化をつけられていますか?
アオイ:変化をつけたつもりです。ちょっとねちっこい歌い方になってませんか?
------わたしとしては大きな変化はなく、若干のスパイス程度に感じました。
アオイ:もっと別人が歌ってるくらいに歌い方を変えたかったんですけどね。キーをもちっと下げても良かったかなぁ。あんまりキーを下げても曲の良さが死ぬと思って、このくらいの高さに落ち着いたんですよ。企画ものだしDIAURAのyo-kaさんみたいな声に似せたかったのが本音です。リファレンスもDIAURAの曲にしたほうが、作家さんもイメージしやすかったのかも。今回は和の要素が強い世界観だったので、次回はLAREINEとかのヨーロピアンな雰囲気の楽曲でリベンジしたいですね。その時はもっとオマージュ感が出せるようにします。
------どちらの曲も「忘れない 忘れない」や「悲しくて 悲しくて」とサビにリフレインがありますが、ここも意図的に?
アオイ:仰る通りそこは共通させました。そういったところも含めてコンセプチュアルなシングルとして見てもらえると嬉しいです。スプリットシングルとは謳っているものの、ぼく個人のシングル作品であることには変わりないので。以前リリースした「MONOS」のような立ち位置になりますかね。あれも当時スペシャルシングルと銘打っていましたし。
------オトウラさんは基本的に、コンセプト仕立ての作品が多いですよね。
アオイ:企画を考えるのが好きなんですよ。だからかもしれない。何かしらの意味を持たせたいって欲が出ちゃう。
------さて、インタビューでは恒例となりつつありますが、今後の予定もお伺いできますか。
アオイ:作品としては、もう一枚シングルを挟むかどうしようかって感じです。あんまりシングル曲を多く収録するアルバムって好きじゃなくて。現状リリースされた曲で言うと、「あふれる」、「白昼夢」の2曲と、今回の「さくらのひみつ」で、併せて3曲。これ以上増やしたくないけど増えそうだなぁ…。なるべくリリース間隔を空けたくないって気持ちもあるので。あとは、ライブが決まったら会場限定でリリースしたくなるから…やっぱりもう2曲くらいはシングルをリリースするかもしれません。
------予定としては19曲入りのアルバムになるんですよね?であればシングル曲が仮に5曲になったとしても、新曲だけで14曲あることになります。
アオイ:そう考えると許容範囲のような気がしますね(笑)。アルバムは配信と盤のどちらでもリリースしたいと考えていますが、時間的に収録できない場合は曲数を削る可能性はあります。とにかく今年中にはアルバムを完成させたい。ファーストが2022年11月リリースで。当初は2024年内に…と考えていたので特に。それにアルバム以降の作品の構想も既にあるので、そっちも早く着手したいんですよね。でも、自分の中で「今やりたいこと」が先延ばしになるのは良くないと思う反面、先に決めたことをやり遂げてからじゃないとダメだと思っていて。ライブも九州全県ツアーを終わらせて次のフェーズに行きたいと思っています。そこも考えは固まっているので、しっかり進めていきたいともいます。