「アキシロ」セルフライナーノーツ

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2023/09/04 17:15

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「アキシロ」について

前作「ナツメロ」につづき、季節をコンセプトにしたEPとして、今回は「秋」をテーマに制作。

この「アキシロ」というタイトルは「明き代/空き代」という言葉から持ってきました。「明き代/空き代」というのは、文字などを書いた上下左右の余白を表す言葉なんだけど、

歌の物語それぞれに余白を感じるつくりになっていることから

「秋=アキ」が入っている言葉として丁度いいかなと思って、このタイトルにしました。

 

楽曲のセルフライナーノーツでも触れているけど、今回の裏テーマとして、

収録曲すべての歌詞が女性視点の歌詞になっています。

ぶっちゃけ最初からその予定で書いていたわけではないんだけど、気がついたら「あれ?」って。笑

偶然の産物ではあるけど、「秋」っていうテーマにも合う気がしてます。

 

個人的に、男性が女性視点の歌を歌う曲が好き。

それに気づいたのはV系バンドの曲がきっかけかな?

V系バンドの楽曲ってそういう曲が多かった気がするんです。

V系だけじゃなく、売れ線のJ-POP楽曲でもあった気がする。

気がするばっかで具体的な楽曲タイトルが出てこないんですけど。苦笑

 

さて、楽曲については前作よりもミディアムテンポの楽曲が出揃いました。

アップテンポなのって「t∞ late」くらい?

ライブをやるとしたら盛り上げたいという気持ちもあるんですけど、

そういうのは盛り上げ上手や楽しませ上手な方々にお任せしちゃおうかな、と。

そういうライブがしたい気持ちもあるけど、僕は歌をじっくり聴かせるライブがしたい、

歌を聴いて欲しいっていう気持ちが強いみたい。

 

それに気付いたきっかけが、牧田琢磨さんと田澤孝介のお二人によるライブだったんですけど、

「こんな風にチェロやピアノを従えて歌を歌ってみたい」と思いました。

ダウトの幸樹さんや、シドのマオさんも、似たような形態でソロライブをされていて。

その当時から持ち続けている気持ちだなって思い出しました。

なので、そういった形でも成立する楽曲になったのかなぁって自己分析。

元々バラード大好き人間ですしね。

 

今後の作品については、もう少しアップテンポ系の楽曲を用意したいと思ってたりするけど、

それについてはその時までお楽しみをとっていただくということで。

とりあえず、今回も名曲ぞろいの「アキシロ」を堪能していただきたいです。

各曲の解説は下記をご覧下さ~い!

 

 

1.apples

 

秋をコンセプトにした今作の1曲目を飾るのは「芸術の秋」をテーマにした「apples」になります。

また、女学生同士の同性愛の歌詞でもあります。

芸術家は同生愛者が多いって聞くんですよね。そこからイメージを膨らませました。絵を学んでいた学生時代、仲間も含めていじられたことがあります。

今でこそLGBTについて考えられる世の中にはなりましたけど、

それって表面上のことだけで、差別は続いていると思うんですよね(個人的な見解です)。

僕自身は男の体を持って生まれてきて、女性を恋愛対象として見るけど、

悩んでいたり、苦しんでいる方もいるんでしょうし。

 

この歌では、家族やクラスメイトに打ち明けず、二人の世界で愛を育んでいる状態です。

二人の関係性をおおっぴらにすれば好奇な目で見られることをおそれて、隠している主人公。

なんだかその切ない状況というか、思春期かつ、誰にも言えない恋というのが儚くて美しくもあるような気がして、

こういった切なさ全開の楽曲に仕上げていただきました。

 

制作を依頼したRyuさんには細部にまでこだわっていただいており、いつも舌を巻く思いです。

この素晴らしい楽曲を活かすも殺すも僕の歌次第。

レコーディング当日、若干喉の痛みもあり、理想通りの歌声が出せず、

もどかしい思いもありましたが、歌詞を汲み取った歌い方にこだわりました。

メロディーについても同様で、Ryuさんが渡してくださったデモのメロディーから

一部大胆に変更したりして、レコーディングしました。

いつも以上にレコーディング前に練習した曲だったので、

万全の状況でレコーディングしたかったなぁ。

でも仕方ない。時間は有限なので。

 

そうそう。タイトルについて触れていませんでした。

なんで「apples」というタイトルなのか。

二人が描く絵の中の暗号というものが林檎なんです。

絵画の中で林檎というのは、いくつかの意味を表すものであったりしますけど、

この歌詞の中では「愛」を象徴するものになっています。

ふたりの少女のことも含めて「apples」ということです。はい。

 

 

2.usual

 

テーマは「体育祭」。

あの男子バカだなー、子供だなーと思っていたのに、

真剣な表情を見てときめいてしまった女の子が主人公です。

 

1コーラス目でキュンとして、2コーラス目からはその後恋をどんどん自覚していく様子を描いています。

わかりやすく情景が浮かぶような歌詞にしたつもりだけど、

2コーラス目の『歓声の中/笑ってる君』がちょっとわかりづらいかな?

これはリアルタイムな状況じゃなくて、体育祭の時のことを思い出している状況なんです。

それならつじつまが合うのではないでしょうか。

親友からの指摘で意識していることに気がついて、

そこからはもうドキドキが止まらくなっちゃうわけですが、

何度か出てくる『どうしよう/どうしよう』というフレーズの意味合いが変わっていくのが、この曲の面白いところかな。

 

あと、『残暑』というワードがあるし、今回のコンセプト作品に収録されていることから、

秋が舞台となっていますが、地域によっては春に体育祭を行うところもあるんですよね?

僕は体育祭といえば秋というイメージがあったので、秋のテーマとして書き下ろしました。

ここに出てくる『クリーム』は意味が二重になっていて、

「日焼け止めクリーム」」と「アイスクリーム」のことだったりします。

体育の際の時だけ校庭にかき氷やアイスクリームを売りに来るおじさんがいませんでしたか?(笑)

それを思い出して、2つの意味を持たせることにしました。

でも実は3つ目の意味もあって。歌詞は『クリーム溶かす』という表記なんですけど、

響きだけだと『クリームと化す』と間違えるかなって。

主人公は、歌詞の通り体育祭で積極的に頑張るタイプの女の子じゃないので、

夏の暑さで溶けちゃっている(暑さにだれている)ところも表現できるなぁと。

 

今作も安定のmainzさんに作・編曲を依頼しました。

全体的なアレンジはもちろんですけど、出だしのベースの音色が特に良いですね。

部分的に僕なりの解釈でメロディーを変えた部分がありますけど、

切なさや青春感が溢れた楽曲で、この曲も歌っていて気持ちがいいです。

 

 

3.t∞ late

 

タイトルの「t∞」の部分は「o(オー)」が2つではないんです。

「∞(無限大)」のマークです。

主人公の気持ちを考えたら、これが適切な表現だと思ったんです。

too lateとは「遅すぎる」という意味なんだけど、無限大のマークを使うことで

「すーっっっっっごく遅い!」ということを表現できているかな、と。

 

この歌は片思いと「文化祭」がテーマになっています。

歌詞については読めば分かるから、基本的には解説は不要かな?

あ、『残り5つの季節』って歌っているのは、卒業をタイムリミットとして考えているからです。

つまり、(中学生と高校生のどちらでもいいけど、)2年生の秋頃の話となりますね、この歌詞は。

 

文化祭って秋にやるよね?

これも体育祭と同じで地域や学校、年代によって秋にやらないところがあるかもしれないけど、

秋のイメージなので、秋の中のひとつのテーマとして今作に収録しました。

3曲目にして、今作ではようやく明るい印象の楽曲が登場しますが、

すんなりハッピーエンドで終わらないところが、実に僕らしいな、と。

『彼のこと好きになると決めた』と言っているけど、1回目と2回目じゃ心境が違うんですよ。

1回目は、年下の彼にしようって決めてるけど、

2回目の時は、ずっと好きだった人から「文化祭一緒に見てまわろうよ」って誘われた後だから

心に迷いが生じていてはっきりしない感じ。伝わったかな?

 

これは余談になりますが、歌詞に登場する『あの歌』は、ある特定の歌で、

ずばりKinKi Kidsの「愛されるより 愛したい」のことです。

主人公の気持ちそのままのタイトル通りですよ。

こちらの曲を聴いたことがない人は、この曲も聴いてくださいね。

 

テーマが文化祭ということもあって、明るくてポップな印象の楽曲だけど、

内容が内容だけに明るいだけじゃない切ない展開があって、文句なしの構成です。

制作してくださったしゅーさんに感謝、感謝。

この曲も歌っていてとても気持ちいいんですよね。丁度いいキーだからかもしれない。

 

この曲に限らず、レコーディング前に練習することが以前より増えたんだけど、それも関係あるのかもしれない。

ニュアンスや歌い回しを練習の段階でかっちり固めたから、レコーディングはスルッと終わりましたよ。

1、2回歌って、あとはどっちのテイクにしようかなーってくらいで。

この曲もライブ映えしそうだから、ライブをやるとしたらセットリストに組み込みたいな。

 

またまた余談になっちゃうけど、僕の曲を女の子に歌ってもらいたいっていう願望があって。

プロジェクトを発足した際は、この曲も歌ってほしいって思います。

可愛く歌ってもらえたらすごくハマると思うんですよね。

 

 

4.unravel

 

この歌詞の主人公、すんごいネガティブ。

もともと彼女が持っている気質もあるんだろうけど、彼氏の態度がもっと優しいものだったら、

こんな風にはなっていなかったかもしれませんね。

そもそも、彼氏も最初は笑顔で許したり、全然気になっていなかったんじゃないかな。

だけど、付き合いが長くなるうちに些細なことも気になり出して…。

きっとどっちが悪いということじゃない思うんだけどね。

そんなありふれた恋人たちのお話。

 

今回のテーマは秋にちなんで「紅葉」と「マフラー」になっています。

テーマというかその二つがキーになってる感じ。

「秋にマフラー?」と思うかもしれないけど、

冬が来て寒くなる前に渡しておきたいっていう主人公の性格も表したかったし、

ふたりの関係性を糸でも表現したくて。

 

「紅葉」に関しては最後にしか出てこないけどさ。

今まで流してきた涙が道いっぱい濡らすものだったとしても、

それを覆い隠すほどの鮮やかな紅葉の上を歩いていくことで、

彼女が明るい未来に向かっていっていると思っていただけたら。

そんな思いで歌詞を書きました。

 

涙を我慢するんじゃなくて、泣いてしまうけど、

それをうつむいて隠すところがなんだかいじらしい。

そんな彼女が愛おしく感じたり(自分で書いてるくせにね)。

 

曲調は少しだけシティポップ風にまとめてもらいました。

別に流行りに乗っかったわけではないですよ?

曲調の幅を広げるためのひとつの手段としてシティポップ風のアレンジを取り入れたんです。

あくまで「そっれぽい感じ」だから、そのジャンルが好きな人や詳しい人が聴いても

「これはシティポップじゃないよ!」と言われると思うんですよ。

うん、それで結構です。

シティポップ風味の味付けをしたかっただけなので、それが僕の中での正解。

でも、シティポップと言えば「ギターは軽めの音かな?」という漠然としたイメージがあったから、

「ギターのリフは軽めのチャカチャカした感じで」みたいなオーダーを出した気がする。

こんなふわっとした言葉で楽曲を形にできるんですから、つくづく作家さんは凄いなぁ…と感心します。

 

あっさり終わってしまうので、間奏をはさんでもう一回サビを付け足すか、

それとも単純にサビを繰り返すか、最後の最後まで悩んだけど、

この構成に落ち着いて良かったんじゃないかな。

 

 

5.mysterious

 

「読書の秋」がテーマとなっている今作。

偶然、図書室で見かけた男の子に片想いして眺めている女の子の歌です。

なんとなく、時代背景は平成初期のイメージです。

携帯電話とかが普及していない頃とか。そんな感じ。

 

今回も難しい言い回しは控えて、分かりやすい歌詞にしているつもりですが、

興味のない本を読んでいる理由って分かりますか?

これはね、図書室にある本って、一番後ろのところに貸し出しカードがあったんですよ。

今もあるのかな?借りる時に自分の名前を記入するの。

それで、男の子の名前を知ろうとしたり、自分の名前を知ってもらおうとしたりしているわけ。

 

あ、一番最後の「8秒前」が、何故「8秒」なのかは、聴いてくれた人たちそれぞれで考えて欲しい。

ちなみに、一番最後のAメロ。あそこだけ男の子からの視点になっています。

 

さて、今回もRyuさんに楽曲を依頼させていただいたわけですが、

今回はかなり制作が難航しました。

基本的に、僕が書いた歌詞に、作曲・編曲をしていただくんですけど、

メロディーが僕の求めていたイメージのものにならなくて。

何回も何回も練り直していただいて、相当お手数をおかけしたんですよ。

その上ラテン系の楽曲にしたかったこともあり、アレンジに悪戦苦闘させてしまったわけです。

どうにか出来ないかと僕も四苦八苦して、今回は奇跡的にメロディーが出来たので、

僕自身が作曲したメロディーにバックのアレンジをしていただくことで落ち着きました。

作曲が苦手なので、部分的な一節や、一部パートのみ変更することはありましたけど、

ソロ活動を開始してからは1曲丸々作曲しないようにしていたんですけどね。

「こんなイメージで」とぼんやり頭に浮かんでいたものを即興で形にしたら意外といいものができて、愛着も湧いちゃって。笑

そのメロディーにアレンジをしてもらったから、アレンジ的にはラテン調の風味はだいぶ薄まったかなぁ。

言われてみればなんとなくラテンっぽいかも?みたいな感じはしませんか?

いずれまたリベンジできたらいいですね。

苦労した分より聴いて欲しい楽曲になりました。

 

 

6.null

 

「アキシロ」を締めくくるにふさわしいバラード。

テーマは「秋の夜長」、「睡眠の秋」となっています。

他の楽曲では分かりやすい歌詞を心がけているんだけど、

この曲に関しては、わりかし抽象的な歌詞になってるし、

解説はしないほうがいいんじゃないかって思ったの。

 

切なくも儚げで脆い感じだから、ネタバレしちゃうと曲の雰囲気を壊しちゃうかもって危惧していて。

でもまぁ、良い曲はそんなこと気にさせないものだとも思って。

この曲すごく良い曲じゃないですか?←

それでもネタバレが嫌な方は、ここから下を読まないでくださいね。

 

さて、ここまで勿体ぶってきたわけですけど、ずばり!

「夢を見ても、どんな夢を見てたか忘れちゃうよね」ってことを

少し幻想的な感じで歌っているだけの歌です。あはは。

僕は眠っていて見る夢に対してこんなイメージを持っています。

夢って目が覚めても覚えてるものもあるし、

ついさっきまで覚えてたのに忘れちゃったりするものもありますよね。

 

僕だけかもしれないんだけど、覚えている夢は正夢にならないけど、

忘れちゃって思い出せない夢は正夢になると思ってて。

だから、「未来の忘れ物」って歌っていたりするんですよ。

まぁ、あまり深く考えずに聴いてもらって大丈夫です。

この曲に限らずね。音楽ってそんな小難しいものじゃなくていいと思うので。

 

楽曲に関しては、リファレンス曲も基に、リファレンス曲に負けないほど良い曲に仕上げていただきました。

事前に細かくオーダーした部分もありますけど、何も言っていない部分でも、

ここでこういう風に展開して欲しいな~と思ったイメージ通りのアレンジが返ってくるんですよ。

そういうのってルーツが近くないとできないことだと思うから、勝手に親近感を持っていたりします。

 

「アキシロ」のラストに収録すると決めていた曲だから、

壮大に熱く!というよりは、切なく叙情的な歌い方をしようと決めて

レコーディングに臨みました。

いつも以上に声のトーンを気にかけたりしてね。

バラードだから、歌ったあともどのテイクを使うか神経を使いました。

この曲を聴きながら眠りについてもらえたら嬉しい限り。

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